看護師の仕事のストレス、どう対処していますか? ここでは、心理学にもとづいた「ストレス・コーピング」や「認知行動療法」をご紹介します。
ストレス・コーピングって何?
不規則な勤務時間や、命を扱う緊張感、チーム医療の人間関係…。看護師のお仕事は、つねにさまざまなストレスにさらされています。
ストレスに対して我慢しすぎると心身に不調をきたすこともあり、うつ病や体調不良で数年は休養が必要になってしまったり、場合によっては再起が難しくなってしまうことも。そうなる前に、じょうずなストレス対処法を身につけたいものです。
そこで紹介したいのが、心理学にもとづいた「ストレス・コーピング」。「コーピング」とは、「cope=問題に対処する、切りぬける」という言葉に由来するメンタルヘルス用語で、「ストレス対処法」と訳せます。近年、学校やビジネスの場でのストレスに対する考え方として注目されています。
ストレス・コーピングの具体的な方法
ストレス・コーピングの考え方を身につけるのは、看護師の仕事においてもきっと役に立つでしょう。やみくもにストレスを我慢したり、そのときどきのストレスになあなあで対処するのでなく、心理学をもとに自分の状態を客観視することで問題に対処していけるようになります。
ストレス・コーピングの方法は、おもに以下のように分類されています。
●問題焦点型コーピング
ストレスのもととなる「原因」を解決したり、取り除くことを目的とした対処法です。
例えば、苦手な作業などがストレスになっている場合は、自分の努力で苦手を克服することがこの対処法となります。
また、夜勤の多い部署や、苦手な上司のいる職場がストレスの場合は、異動や転職をして原因を取り除くのも対処法のひとつです。
●情動焦点型コーピング
ストレスの原因を自分ではどうにもできないとき、それによって引き起こされた不安や怒りなどの感情を低減することを目的とした対処法です。
取り返しのつかない失敗をしたときや、人が亡くなったときなどに、泣いたり、心の内を誰かに聞いてもらったりして、感情を放出する方法があります。
●認知的再評価型コーピング
ストレスの原因に対して、見方や発想を変えたり、距離を置いたりして考え方を変える方法です。
ポイントは、今までの考え方を否定したり、とにかく前向きに考えようとしたりするのではなく、「考え方の幅を広げる」ことです。
「同僚と自分を比べてしまうが、比較することに意味はないかもしれない」「先輩に怒られてばかりでつらいが、評価してくれる患者さんもいるかもしれない」というふうに、“見方を変えて現実的な可能性を探る”ことと考えるとよいでしょう。
●社会的支援型コーピング
専門家や家族、友人、上司など、信頼できる人にアドバイスを求めたり、話をしたりすることで心理的安定を得る方法です。
●気晴らし型コーピング
趣味や運動、温泉、カラオケなどのレジャー、ヨガなどのリラクゼーション法で気分転換やリフレッシュをはかる方法です。日常的ないらだち解消などに有効です。
コーピングとあわせて知りたい「認知行動療法」
以上のコーピングを、ストレスを感じたときにどれがよさそうか選んで試してみるのが良い方法でしょう。どんなことがストレスで、どんなコーピングが効果的だったか、客観的に紙に書いて整理するのがおすすめです。それを試していくうち、「こういったストレスにはこのコーピング」というパターンが自分のなかで分かってくることもあります。
そして、コーピングとあわせて意識したいのが、「認知行動療法」という心理学の考え方です。
これはざっくり言うと、
「自分がどういう状況になったとき、どんな考え方をし、その結果、心や体にどんな現象が起きるか」を客観的に整理し、【その考え方(認知)を柔軟で現実的なものに変えてみる】方法です。
例えば、「上司のAさんと仕事をするときは、失敗するかもという緊張で胃が痛くなる」というストレスなら、そのときどんな考え方が浮かんだか(失敗して、ダメな看護師と思われるかも)を整理し、その考えに代わる考え(失敗するかもしれないが、しないかもしれない。失敗しても、それを今後に生かせばいいのではないか)を探るという方法です。
「これがもし親友の相談だったら、自分ならどうアドバイスするか?」と考えるのも、違う見方を探る一つの方法です。
ストレス・コーピングで自分の考え方を変えてみようと思うとき、この認知行動療法はきっと役立つことと思います。
自分をストレスから守るためにも、ぜひストレス・コーピングを試してみてくださいね。
参考
◎公益社団法人 日本看護協会
https://www.nurse.or.jp/nursing/shuroanzen/safety/mental/kojin/index.html
◎「ストレスコーピング ―自分でできるストレスマネジメント―」坪井康次(東邦大学医学部心身医学講座)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhas/6/2/6_2_2_1/_pdf