児童虐待が大きな問題になっている昨今、臨床心理士の役割が注目されています。
虐待を防ぐために、臨床心理士はどんなことができるのでしょう?
急激に増え続ける児童虐待
近年、児童虐待の件数が急激に増え続け、大きな問題となっています。
2017年度に児童相談所が対応した虐待の件数は約13万件で、過去最多となりました。
調査を開始して以来、虐待件数は27年連続で増え続けています。
悲しいことに、虐待による死亡事例も年間50件を超え、これは一週間に一人の子どもが亡くなっていることになるのです。
虐待への対策が求められる中、心理の専門家である「臨床心理士」の役割が注目されています。
子育て支援で活躍する臨床心理士
臨床心理士とは、心理カウンセラー、心理相談員とも呼ばれる心理学の専門職。
心の問題を抱えた人の心理相談や心理療法をおもに行う仕事です。
臨床心理士は、児童相談所、子育て支援センター、病院、学校などさまざまな場所で活動しています。
虐待を受けた子どもたちに対して、臨床心理士は心のケアを行うなど重要な役目を負っていますが、それだけでなく虐待を未然に防ぐためにもできることがあります。
それはどんなことでしょうか。
親へのケアが虐待を防ぐ
児童虐待の加害者の多くは、子どもの実の親です。
内閣府の調査では、加害者は実母が54.3%と最も多く、次いで実父が31.9%となっています。また、死亡事例では実父が加害者であるケースが最も多くなっています。
親からの虐待は家庭内など密室で行われるため、発覚しにくいことが多いもの。
そこで、子育て支援のさまざまな場面で親子に関わる臨床心理士の役割が注目されているのです。
臨床心理士は、子どもの定期健診や家庭訪問、母親サロン、地域の相談事業、学校や病院でのカウンセリングなど、親子と接する機会が多くあります。
そのような場で、臨床心理士には以下のような役目が求められています。
●子育て支援による発生予防
虐待は、親が子育てをしていく中で、苦労や不満が子どもへの加害となって表現されるケースが多々あります。
臨床心理士はそれを防ぐために、子育ての悩みをしっかり汲み取り、親の心理ケアを行うことで虐待の芽を摘み取ることが期待されます。
●親へのメンタルケア
虐待は、加害者である親もまた自分の親から虐待を受けていたり、愛情を受けられず心の傷を負っている場合もあります。
そういった場合は、親の側も心理療法を行うことで心の問題を解消し、負の連鎖を止める必要があります。
●早期発見と介入
臨床心理士はさまざまな場で、虐待の疑われる場面に遭遇する可能性があります。
そのときに事態を見逃さず、所属する機関内で協議して通報するか、個人として通報することも大切な役目です。
通報後は、児童相談所や自治体などと連携して、家庭への介入や保護などを行います。
各機関と協力することが大切
児童虐待は、学校、児童相談所、警察、病院、地域の協議会など、さまざまな機関が協力しなければ予防できません。
そのため、臨床心理士もその一員として、各機関としっかり連携をとることが求められます。
被害を訴えられない子どもを救うだけでなく、加害者となる親を増やさないためにも、臨床心理士の専門的な立場での活躍が期待されています。
(参考)
◎臨床心理士のための子ども虐待対応ブック
http://www.jsccp.jp/suggestion/sug/pdf/20161005kodomogyakutaitaiou.pdf
◎児童虐待対応13万件、27年連続で増加(日本経済新聞)
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO34767860Q8A830C1CC0000?s=0
◎平成27年版 子供・若者白書(内閣府)
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h27honpen/b1_05_02.html
キーワード:虐待、児童虐待、虐待加害者、臨床心理士、心理カウンセラー、心理相談員、心理学、ケア、メンタルケア、子育て、子育て支援、早期発見、介入