子育て

児童心理治療施設って知ってましたか?

心理的な苦しみを抱える子どものための「児童心理治療施設」。どんな施設なのか見てみましょう。

いま注目すべき専門施設

虐待やいじめなど、子どもを取り巻く痛ましいニュースが多い近年。
ニュースになるのは氷山の一角で、つらい思いをしている子どもたちは私たちが想像するよりずっと多いのかもしれません。

そんな子どもたちをケアする環境が求められる中、注目したい施設があります。
それが「児童心理治療施設」。
どのような施設なのか見ていきましょう。

児童心理治療施設とは?

児童心理治療施設とは、「心理的困難や苦しみを抱え、日常生活の多岐にわたり生きづらさを感じて心理治療を必要とする子どもたちを、入所または通所させて治療を行う施設」と定義づけられています。

分かりやすく言うと、虐待やいじめなどにより、情緒不安定になったり学校に適応できなくなった子どもたちが、心の治療を受けながら生活できる施設です。

もともとは、不登校や非行が問題になり始めた1961年に、子どものメンタルケアを目的として法制化されました。
その後は、虐待の被害を受けた子どもの入所が多くなっていったようです。

どんな子どもが入所しているの?

現状は、入所している子どものうち、虐待を受けた子どもが約8割と大半を占めています。(平成22年調査より)

虐待を受けた子どもたちは、傷ついた経験により外の世界を怖れて自分の世界に閉じこもってしまったり、人を信じられなくなったり、考えるより先に動いたりしてしまうことがあります。

その結果、不登校や引きこもり、落ち着きのなさ、情緒不安定、パニック、不眠、大人への反抗、暴言暴力などの状態を見せることがあります。
中には、虐待によるPTSDを抱える子どももいます。

児童心理治療施設では、こうした子どもたちを受け入れ、心理面からの専門治療を行っているのです。
年齢は、小中学生を中心に、20歳未満を対象としています。

発達障害のある子どもも約3割いますが、この施設では発達障害そのものを治療するのでなく、障害に関連して起きる二次的な心理症状の治療を目的としています。

施設ではどんなことをするの?

子どもたちは、施設に入所または通所して治療を行っていきます。
平均入所期間は2年半ほどです。

具体的には、以下のようなことを行います。

●心理治療

児童精神科医やセラピストにより、絵を描くことやゲームなどを通じて、自分の不安や葛藤を乗り越える手助けをします。
中学生の頃からはカウンセリングも行われます。

●生活指導

保育士と児童指導員が行います。集団生活や仲間作りが苦手な子どもが多いため、遊びやスポーツを友達・職員と楽しむことにより自信を取り戻していきます。

●学校教育

施設内の教室または地域の学校との連携で学習を進めます。一般の学校と同じ教材を使い、少人数学級で、集団が苦手な子どもでも学びやすい環境で学習できます。

また、誕生会や学園祭、季節の行事などを通じて協調性を育んでいきます。

施設生活を終えたあとは?

児童心理治療施設の目的は、家庭から離れて集団で暮らすことにより、家庭ではできない「心の見つめ直し」をすることにあります。

施設での治療を終えれば、子どもたちはまた家庭や学校に帰っていくことになります。
そのため、家庭に帰ったあとの家族関係をどうするかなどを家族と話し合ったり、その後の進路を一緒に考えるのも施設の役割です。
医師、セラピスト、児童指導員などが一丸となって、包括的なサポートをします。

今後も期待される施設の役割

児童心理治療施設は、平成30年には新たに4施設が開設され、現在全国に50の施設があります。
虐待などの悲しい経験を背負った子どもたちが、大切な自分を取り戻すために、こうした専門機関は今後もその役割が期待されています。

(参考)
◎児童心理治療施設とは-全国児童心理治療施設協議会

https://zenjishin.org/profile.html

◎情緒障害児短期治療施設(児童心理治療施設)運営ハンドブック-厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/syakaiteki_yougo/dl/yougo_book_4.pdf

◎児童養護施設等について-厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11901000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Soumuka/0000166119.pdf

キーワード:児童心理治療施設、虐待、いじめ、心理的困難、心理治療、情緒不安定、メンタルケア、発達障害、子ども、生活指導、学校教育、心の見つめ直し