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身体拘束が認められる場合、認められない場合とは?

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介護施設などで行われる身体拘束は、その是非が議論になっています。どんなときに身体拘束が認められるのか、考えてみましょう。

身体拘束はいけないこと?

高齢者や障害者の施設において、一部で行われている身体拘束。
手足をベッドに固定したり、個室に隔離したりといった行為をさします。
患者さんがそのような状態にあるのを見るのは、その家族にとっても精神的につらいものです。

しかし、認知症や精神障害の患者さんの身の危険を防ぐなどの理由で、やむを得ず身体拘束が行われるケースもあるのが実のところです。

そこで、身体拘束は現在どのように考えられているのか見てみましょう。

こんな身体拘束は禁止?

高齢化社会に伴い、平成11年には厚生労働省により、介護施設などでの身体拘束を原則禁止とする省令が定められました。

現在、その基準において、以下の身体拘束は禁止行為とされています。

1 徘徊しないように、車椅子や椅子、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

2 転落しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る。

3 自分で降りられないように、ベッドを柵(サイドレール)で囲む。

4 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等で縛る。

5 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。

6 車椅子や椅子からずり落ちたり、立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰べルト、車椅子テーブルをつける。

7 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。

8 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる。

9 他人への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに体幹や四肢をひも等で縛る。

10 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる。

11 自分の意思であけることのできない居室等に隔離する。

近年では、虐待防止の観点だけでなく、身体拘束が身体機能の低下もまねくことも危惧されています。

身体拘束が認められる場合は?

ただし、上記の禁止行為については、
「やむを得ない場合を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為を行ってはならない」という文言が添えられています。

つまり、裏を返せば「やむを得ない場合は身体拘束も辞さない」ということ。
実際の現場では、安全確保などのためにやむなく身体拘束が行われることも多いのです。

では、「やむを得ない場合」とはどのような場合を指すのでしょう?

それは、以下の3つを全て満たした場合とされています。

①切迫性
本人または他の利用者等の生命、身体、権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。

②非代替性
身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替するサービスの方法が無いこと。

③一時性
身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること。

つまり、身体拘束をするより他に安全を守る方法がなく、かつ、その拘束が一時的な場合に限り認められる…ということになります。

現場での調査では…

介護や医療の現場では、身体拘束はしてはならないと認識しながら、それをせざるを得ないケースが多く、職員がそのジレンマに悩むこともあるようです。

障害者施設での調査によると、実際に行われている禁止行為は決して少なくありません。

なかでも、車いすから落ちないように腰ベルトなどをつける、ミトンの手袋を着用する、ベッドを柵で囲むといった行為は行われた件数が多く、その理由はどれも「利用者の安全配慮」が最も多くなっています。

身体拘束ゼロをめざす取り組み

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そんななか、介護業界では身体拘束廃止への流れが強まっており、厚生労働省や日本看護倫理学会では、身体拘束ゼロをめざすためのガイドラインが発表されています。

たとえば日本看護倫理学会のガイドラインでは、本当に身体拘束に代わる手段がないのか探るために、介護の方法や環境を見直す基準が示されています。

また、介護の人手不足が身体拘束の増加につながるという見方もあります。

身体拘束は簡単には解決できない問題ですが、少しでも件数を減らせるようになれば望ましいですね。

<参考>
★厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き」
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/zaishien/gyakutai/torikumi/doc/zero_tebiki.pdf

★日本看護倫理学会「身体拘束予防ガイドライン」
http://jnea.net/pdf/guideline_shintai_2015.pdf(2023/1/26現在リンク切れ)

★NPO法人 Pand A-J「サービス提供事業所における虐待防止指針および身体拘束対応指針に関する検討」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/cyousajigyou/dl/seikabutsu10-1.pdf

キーワード:身体拘束,高齢者,障害者,切迫性,非代替性,一時性,介護,医療